研究概要 |
消化管間葉系腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor ; GIST)における炭酸脱水酵素-関連蛋白(Carbonic anhydrase-related protein ; CA-RP)の発現とその意義について以下の実験結果を得た。 1、正常消化管におけるCA-RP VIII, X, XIの発現の検討 von Recklinghausen病患者の手術切除胃組織を用いた免疫組織染色を行った結果、3種類のCA-RPは筋層内Auerbach神経叢の神経節細胞の細胞質に発現が認められた。一方、GISTの前駆細胞とされるKITおよびCD34陽性のカハールの介在細胞にはいずれのCA-RPの発現も認められなかった。 2、GISTにおけるCA-RP VIII, X, XIの発現の検討 GISTの手術切除組織切片(n=22)において3種類のCA-RPの発現を免疫組織染色にて検討した結果、CA-RP VIIIは59%、CA-RP XIは91%の腫瘍で陽性であり、CA-RP Xはすべての腫瘍で陰性であった。CA-RP VIIIおよびXIの発現は腫瘍の中心に比し辺縁部で強くみられた。 3、培養GIST細胞への遺伝子導入によるCA-RP蛋白の強制発現 上記2の結果を受け、遺伝子導入によりCA-RP XI蛋白を安定的に強発現する培養GIST細胞株(GIST-T1-CA11)を樹立した(mRNAの発現はwild-typeのGIST-T1細胞の6.8倍増強を確認)。wild-typeのGIST-T1細胞に対しGIST-T1-CA11細胞では、in vitro培養において細胞増殖能の有意な増強(p<0.005)と、chemotaxis chamberを用いた培養において有意な浸潤能の増強(p<0.005)を示した。 4、以上の結果より、カハールの介在細胞からGISTへのtumorinogenesisの過程では、CA-RP VIIIおよびCA-RP XIの発現増強が腫瘍辺縁部で認められ、強発現したCA-RP XIはGIST細胞の増殖能および浸潤能を増強していることが示唆された。
|