研究概要 |
肝臓での細胞外基質産生は主にDisse腔に存在する星細胞が行っている。一方、Transforming growth factor beta (TGF-β)とStress activated protein kinase (SAPK)シグナルは肝障害時の組織修復において重要な伝達系であると考えられている。In vivoにおけるTGF-βシグナル伝達経路の検討はシグナル伝達物質であるSmad2,3に対する部位特異的なリン酸化抗体が存在しなかった為不十分であった。そこで抗Smad2,3リン酸化抗体を計4種類作成し,ヒト慢性肝炎組織におけるSmadを介するシグナル伝達を検討した。 ヒト慢性肝炎患者から生検し、パラフィン切片を作成した。活性化星細胞のマーカーであるα smooth muscle actin (α-SMA)を用いた免疫組織学的検討を同時に行った。正常肝組織においてリンカー部がリン酸化したSmad2/3はほとんど認められなかった。慢性肝組織においてリンカー部がリン酸化したSmad3はα-SMA陽性の間葉系細胞の核内に認められ、リンカー部がリン酸化されたSmad2は細胞質に認められた。また、正常肝組織においてC末部がリン酸化したSmad2/3はほとんど認められなかった。慢性肝組織においてはC末部がリン酸化したSmad2/3は間葉系細胞及び肝細胞の核内に認められた。 これらの結果より、ヒト肝線維化過程においてTGF-βはリンカー部がリン酸化されたSmad3を介して線維化シグナルを伝達していると考察された。
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