研究概要 |
骨髄由来単核球細胞移植による血管再生治療が本邦を中心として始まり,その有効性が報告された.我々は,骨髄細胞を採取せずに,G-CSF投与後に自家末梢血単核球細胞を移植する方法を用いて2003年2月より重症末梢動脈閉塞疾患を対象とした臨床研究を行い、その有効性を報告した.骨髄と異なり末梢血には血管内皮前駆細胞はほとんど含まれていないことが明らかにされている.しかし,我々は成人末梢血単核球を分離・長期培養していく過程で、血管内皮前駆細胞(EPC)とは明らかに異なり、形態学的に成熟血管内皮細胞に類似した増殖活性の高い細胞(outgrowth endothelial cell)が出現してくることを見いだした.そこでEPC,OEC、ヒト臍帯血静脈由来内皮細胞(HUVEC)の3種類の細胞における活性酸素産生酵素NADPHオキシダーゼコンポーネントの発現を比較検討して以下のような結果を得た. 1.EPCでは,貪食細胞系NADPHコンポーネント(Nox2,p22phox,p47phox)が強く発現してるが、Nox4の発現は弱かった.OECとHUVECでは,Nox4はEPCよりも強く発現していたが、Nox2、p22phox、p47phoxの発現は低下していた.また,EPCではNox4,p22は細胞質に発現していたが、OECでは主に核に発現が認められた. 2.活性酸素除去酵素MnSODの発現はOECやHUVECに比しEPCでは増加していた. 3.NADPHオキシダーゼ阻害薬DPIによりEPCの生存細胞数が減少した. 以上からEPCとOEC,HUVECにおけるNADPHオキシダーゼコンポーネントの発現パターンは異なり、NADPHオキシダーゼがEPCの細胞生存に重要である可能性が示唆された.
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