研究概要 |
1 背景 母体の慢性喫煙習慣はSIDSの危険因子である。SIDSの発症メカニズムは明らかにされていないがタバコの主成分であるニコチンが直接的に胎児中枢神経の発達に影響を与えるとの報告がある。以前、我々の研究グループでは胎生期のニコチン慢性曝露が生後早期の低酸素および高炭酸ガス換気応答を含む呼吸調節に抑制的に作用することを明らかにしたが、この抑制作用が成長にともなってどのように変化するかはいまだ明らかではない。したがって胎生期のニコチンの慢性曝露が生後の個体の換気応答に与える影響および形態学的変化を経時的に検討することは有用であると考えた。 2 目的 胎生期のニコチンの慢性曝露が、生後の個体の低酸素および高炭酸ガス換気応答に与える影響、脳幹のカテコールアミン作動性神経領域に与える形態学的変化を経時的に検討する。 3 予測される結果 胎生期のニコチンの慢性曝露が個体の低酸素及び高炭酸ガスに対する換気応答を抑制することが予想される。また、呼吸調節に関与していると考えられているカテコールアミン作動性神経領域に何らかの形態学的変化をもたらしていることが期待される。 4 結果 (1)換気応答 各新生ラットをニコチン群とコントロール群とし、体プレチスモグラフ法を用いて呼吸数、分時換気量、1回換気量を室内ガス、低酸素及び高炭酸ガス下に、無麻酔・非拘束状態で測定した。生後2,4,7日における各パラメータはニコチン群の方がコントロール群に比べ、低値であり両群間に有意差あるいは傾向を認めた。 (2)形態学的検討 各日齢の新生ラットの摘出脳幹を固定し、ビブラトームを用いてスライス標本(50μm)を作成し、カテコールアミン作動性神経群をtyrosine-hydroxylaseに対する特異抗体を用いて免疫組織学的に染色したが、予想された結果には至らなかった。今後は手法を変更しその結果取得に勤めることとした。
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