研究概要 |
私たちはピック病の剖検脳に認められるピック小体にproSAASのN末断片が蓄積していることを見出し(Kikuchi et al., BBRC,2003)、またアルツハイマー病剖検脳に見られるタウ封入体がproSAASのN末断片に対するラット抗血清により免疫染色されることを報告した(Wada et al., Neurosci Lett,2004)。この結果から、proSAASのN末断片がタウ封入体に蓄積し、髄液中のproSAASのN末断片が減少していることが予想される。髄液中のproSAASのN末断片を測定し、その減少が明らかになればアルツハイマー病の診断に役立てることができるものと考えられる。平成16年度はヒトproSAASのN末断片にたいするポリクローナル抗体を作成した。ヒトproSAAS 42-59、91-102、179-189アミノ酸部位を免疫して得られた抗体(それぞれM01、Ab-1、Ab-2とする)はヒト脳組織抽出液をサンプルとしたウエスタンブロットにおいて単一バンドとして確認された。 平成17年度は得られた抗体(M01、Ab.1、Ab-2)を用い、その特異性について免疫組織化学的に検討した。病理学的にアルツハイマー病と診断された剖検脳の側頭葉を用い検討した。脱パラフィン後、切片はクエン酸バッファーにより処理し、前述の抗体(M01、Ab-1、Ab-2)と反応させた。一次抗体と反応させた後、ビオチン化された二次抗体と反応させ、その後はABC法により免疫染色を行った。検討したいずれの抗体においても、ラット抗血清において認められたタウ封入体への免疫反応は認められなかった。 ヒトproSAASのN末断片に対するポリクローナル抗体を作成したが、アルツハイマー病に認められるタウ封入体を認識する抗体は作成できなかった。
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