研究概要 |
本研究の目的は、TTRが中枢神経系へどのような機序でアミロイド線維として沈着するのかを明らかにすることである。研究計画は、1)中枢神経系アミロイド沈着を起こしやすい変異TTRと起こしにくい変異で、血清あるいは脳脊髄液中でのTTRの動態を質量解析計により解析する。2)単量体TTRの血清と脳脊髄液中での動態をゲルろ過カラムにて解析する。3)TTR安定化物質の同定である。 研究結果としては、中枢神経系にアミロイド沈着を来たしやすい変異では(Aspl8Gly, Ala25Thr, Tyrl14Cys,Tyr69Hisなど)、血清中では変異TTRはほとんど検出できなかったが、脳脊髄液中では検出可能であった。この変異TTRの血清中と髄液中での動態の差により、全身臓器にはアミロイド沈着をほとんど来たさずに、主に中枢神経系アミロイドーシスを来たしている可能性を考えている。血清中でこれらの変異TTRが検出されなかった機序としては、中枢神経系にアミロイド沈着を来たしやすい変異TTRは非常に不安定であることが報告されており(Sekijima et al. Lab Invest 83;409-417,2003,)、肝細胞から分泌直後に分解されてしまう可能性と、肝細胞内小胞体での蛋白品質管理システムにより、非常に不安定な変異TTRは細胞内で分解され、肝細胞外への分泌量が極端に少ない可能性(Sekijima et al. Cell 121;73-85,2005)が考えられる。脳脊髄液中で、変異TTRが検出できた機序としては、in vitroの研究で脳脈絡叢ではT4(サイロキシン)濃度が高く、T4が四量体TTRと結合しChaperoneとして機能していることが報告されており(Sekijima et al.Cell121;73-85,2005)、血清中より、逆に多少安定化することで変異TTRが髄液中で検出された可能性を考えた。
|