研究概要 |
本年度は新規タウ蛋白分子種の機能解析を行った. 1.新規タウ分子種cDNA作成、培養細胞への遺伝子導入ならびに恒常発現細胞株の作成 新規タウ分子種発現細胞を作成するため、RT-PCRにより得られたcDNAを真核細胞発現ベクター(pCDNA3.1/zeo)にクローニングし、CHOやB103培養細胞へ遺伝子導入し、遺伝子発現を確認後、Zeocin薬剤耐性により恒常発現細胞株を作成した。 2.微小管重合能の検討 野生型,新規タウ分子,Mock(vectorのみ)発現CHO細胞株にnocodazoleを1時間暴露し微小管重合を阻害した後,同剤をwithdrawalし,その後の経時的な微小管再重合をα-tubulinの蛍光免疫染色にて検討したMock細胞に比較し野生型では,微小管重合再重合能は亢進していたが,新規タウ分子発現細胞では,微小管重合再重合能の亢進は認めなかった, 3.ラット神経芽細胞種由来B103細胞における新規タウ蛋白分子種の機能解析 神経細胞における新規タウ蛋白分子種の機能を調べるため,B103細胞にそれぞれの分子種を発現させた.野生型発現株ではMock細胞に比較し長い神経突起が観察され,新規タウ蛋白発現株では短い神経突起細胞が観察された.血漿除去培地による24時間後の神経突起伸長についてneurite outgrowth assayを行った結果,突起伸長は新規タウ蛋白発現株では有意に抑制されていた.神経突起伸長に関するシグナル変化を調べるため,b-FGF刺激によるERKリン酸化調節について検討したが,Mock細胞,野生型発現細胞および新規タウ蛋白分子種発現細胞には差異はなく,この経路の関与は見いだせなかった.新規タウ蛋白分子種発現細胞のアクチン染色ではストレスファイバー様のアクチン重合が観察され,Rhoキナーゼ系の亢進が示唆され,Rock阻害剤によりRhoキナーゼ系シグナルを阻害したところ,新規タウ蛋白分子種発現細胞の神経突起伸長が観察された.以上より,新規タウ蛋白分子種とRhoキナーゼ系の関連が示唆された.
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