研究概要 |
平成17年度における研究として、ヒト卵巣顆粒膜由来の細胞(KGN)を用いて下垂体ゴナドトロピンFSHと卵巣におけるBMPの機能連携についてさらに検討を深めた。KGN細胞にはBMP I型・II型受容体・Smadが発現し、BMPの添加によりFSH受容体発現は減弱した。FSHはALK-3・ActRII・BMPRII・Smad1/5の発現を増強し、抑制型Smad6/7の発現を減弱した。さらにFSHはBMPリガンド依存的にBMP-6,-7によるSmad1/5/8のリン酸化とDNA合成を促進した。Smad過剰発現モデルを用いた検討ではSmad1,5によるBMPシグナルの増強を認めた。I型受容体の過剰発現モデルではALK-3/ALK-6の過剰発現下においてBMP-6,-7作用の増強が見られ、FSHによるBMP作用の増強はI型受容体の発現亢進による可能性が示唆された。またBMPはKGN細胞のステロイド合成に作用し、特にプロゲステロンの合成を抑制した。BMPはforskolinによるcAMP合成には影響しないが、forskolinやcAMPによって刺激されたステロイド合成の律速段階であるStAR転写活性を抑制した。このようにBMPが顆粒膜細胞でのステロイド合成を抑制する一方で、FSHはBMP活性を増強する新しい「FSHとBMPの相互作用」の存在が見いだされた。また、卵母細胞に強い発現を認めるBMP-15を卵母細胞機能の診断ツールとして利用するためのアッセイ系の設立への基礎研究も進行中である。さらに性腺外の重要な内分泌系として、1)副腎髄質におけるBMPの影響についても評価した結果、副腎髄質細胞に対してBMPがカテコラミン分泌を抑制すること、2)卵巣同様のステロイド産生系をもつ副腎皮質においては、アルドステロン合成系においてBMP-6分子がアンギオテンシンIIによる副腎作用と協調的に作用することが証明された。このように、BMP分子が自己分泌・傍分泌機構により卵巣・副腎皮質・副腎髄質における内分泌調整機構を発揮することが新たに示された。
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