研究概要 |
我々は、A群レンサ球菌をマウスに筋注すると急性期から回復した後に約3週間経過してそれ以降に敗血症を起こして突然死するマウスが存在することを見出し「遅延死」と名付けた。この病態は劇症型A群レンサ球菌感染症(STSS)に酷似しており、動物モデルになると考えた。 本年度は、このモデルがヒトのSTSSにおける病態といえるかどうか、血清中のサイトカインを解析することにより検討した。 溶連菌SP2株(STSS由来株)10^7CFUをddYマウスの上肢に筋注後20日目以降にマウスがショック状態になった時点で、全採血を行い、血清中サイトカインを測定した(遅延死マウスモデル)。サイトカインの測定にはBD Cytometric Bead Array (CBA) Systemを用いた。一方、マウスに溶連菌を静注すると5日以内にほとんどのマウスが死亡することがすでにわかっている(急性死マウスモデル)。したがって、我々がSTSSマウスモデルとして提唱している遅延死と急性死との病態の違いを明らかにするために、コントロールとして溶連菌SP2株10^7CFUをddYマウスの尾静脈にi.v.し、静注後マウスがショック状態となった時点で、同様に全採血を行い、血清中サイトカインを測定した。 その結果、遅延死マウスにおいてはTNF-α,IFN-γ,IL-10,IL-12p70がp<0.01の有意差をもって急性死より高値を示した。ヒトのSTSSにおいても高サイトカイン血症がその病態に深く関与していることが指摘されているが、今回の結果はヒトのSTSSにおける血清中サイトカインの動きと酷似していた。すなわち、このモデルがヒトのSTSSにおける病態を示していることが裏付けられた。また、これらのサイトカインのうちのいずれかがSTSSと関連している可能性が示唆された。
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