研究概要 |
これまで我々は、Lewisラットへのヒト組換えC蛋白フラグメントの免疫で、多発性筋炎の実験モデル動物である実験的自己免疫性筋炎(experimental autoimmune myositis,EAM)を安定して誘導できることを確認し、報告した。 今回我々は、6週齢の雌Lewisラットにヒト組換えC蛋白フラグメントを週1回、計3回免疫すると共に、抗ICOS抗体またはコントロール抗体を初回免疫の1週間後から週2回投与した。最終免疫の2週間後にラット後肢筋組織を採取し、HE染色を行い、炎症スコアを測定した。各種1次抗体を用いて免疫染色を行った。リンパ節と脾臓からリンパ球を分離し、C蛋白に対する反応性を検討した。屠殺時に採血を行い,抗C蛋白抗体の血清中濃度をELISA法で測定した。 コントロール抗体を投与したC蛋白免疫ラット筋組織では無治療ラットEAMでの検討と同様な激しい筋炎所見を認め、筋炎組織へのCD8陽性T細胞とCD11b/c陽性マクロファージの浸潤と、CD8陽性T細胞におけるICOSの発現を認めた。一方、抗ICOS抗体投与群ではコントロール抗体投与群に比べて組織学的炎症スコアの有意な改善を認めた。また、筋組織においてICOSの発現は認めなかった。しかし、C蛋白で刺激したリンパ節細胞や脾細胞の^3H-thymidineの取り込みとIFN-γ産生は、両群で用量依存性に増加し、抗ICOS抗体投与によっては低下しなかった。ラット血清中の組換えC蛋白フラグメントに対する抗体価も,両群とも無処置ラット群に比べて上昇しており,2群間で有意な差は認めなかった。 上記の結果は本EAMの病態形成におけるICOS-ICOSリガンドの相互作用の重要性を示すと考えられた。抗ICOS抗体による病態改善の機序として抗原刺激によるT細胞増殖の抑制や自己抗体産生の抑制を想定したが,今回の研究では確認できなかった。
|