研究概要 |
I.HBワクチン早期投与(国際方式)による母子感染予防の検討 日令5からHBワクチンを開始する「国際方式」で予防措置を行い、1歳前後まで経過観察し得た10例について血清中のHBV-DNA検出を試み予防効果を検討した。 【方法】対象は10例(男児5例,女児5例)で、母親のHBe抗原陽性4例、HBe抗体陽性6例。国際方式は原則として出生時にHBIG1回接種し、その後日齢5・1ヶ月・3ヶ月にHBワクチン接種を行った。追加ワクチン症例は3例だった。HBワクチン接種期間中、HBワクチン終了後1ヶ月、1歳前後のポイントで、HBs抗原・HBs抗体、HBV-DNAをリアルタイムPCR法で測定した。 【結果】全例でHBV母子感染を防止できた。HBs抗体価はワクチン3回終了時で中央値36.5COI、1歳前後では中央値37.5COIであった。検討期間中に測定した9例でHBV-DNAは感度以下であった。この期間中にHBV-DNAを測定できなかった1例は2歳時に測定し、2.1×10^2/mlと弱陽性であった。この症例はHBワクチンへの反応は良好で,HBs抗原陽性化やHBc抗体再上昇は認めなかった。 II.HBワクチン追加例おけるHBV-DNAの検討 HBV母子感染防止措置を行った症例のうち、経過中一度上昇したHBs抗体が低下して追加ワクチンが必要になった症例11例で血清中のHBV-DNAを検討した。 【方法】対象はHBワクチン追加例11例(男児8例、女児3例)。母親のHBe抗原陽性5例、HBe抗原陽性/HBe抗体陽性1例、HBe抗体陽性5例。初回の3回接種終了後、追加ワクチン前、その間でHBV-DNAを測定。2例は国際方式、8例は生後1ヶ月からHBワクチンを開始する「早期投与」例、1例は従来法であった。 【結果】1例のみHBV-DNAが2.0×102/ml、7.0×10^2/ml弱陽性となった。母親がHBe抗原/HBe抗体とも陽性で、第1子が母子感染例(早期陽転)であった。HBc再上昇がみられた。もう1例にHBc抗体再上昇がみられた。この2例は早期投与例で、HBs抗原は持続陰性であった。 III.結論 対象例の多くでHBV-DNAは検出されず、少数例でHBV-DNAが弱陽性となったが、HBs抗体価の推移や追加ワクチンの有無と明らかな相関はみられなかった。
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