研究概要 |
1.昨年度,strain gauge plethysmographyによる血管内皮機能検査を施行したチアノーゼ型心疾患患者15人と正常コントロール15人に対し,laser血流計を用いた血管内皮機能検査を施行しstrain gauge plethysmographyによる血管内皮機能検査の結果と比較した. 2.Laser血流計を用いた血管内皮機能検査では,昨年と同様に上腕動脈の駆血後の反応性充血反応と,ハンドグリップによる血流増加反応をそれぞれ評価した.反応性充血とハンドグリップのいずれの反応においても,正常コントロールと比較しチアノーゼ型心疾患患者の血管反応は有意に低下していた.この結果は,昨年施行したstrain gauge plethysmographyによる血管内皮機能検査と同様の結果であった.チアノーゼ型心疾患を有する患者の血管内皮機能は,異なる2つの方法による血管内皮機能検査のいずれにおいても,正常人と比較し有意に低下していることが明らかであった. 3.2つの方法により評価された血管内皮機能は,SpO_2と有意な正の相関を示した.すなわち,チアノーゼ(低酸素)の程度が強いものほど血管内皮機能は低下していた. 4.昨年度,血管内皮機能と赤血球数,ヘモグロビン,ヘマトクリット,intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1)との間に負の相関を認め,多血症およびshear stressと血管内皮機能との関連が示唆された.そこで,チアノーゼ型先天性心疾患患者の過粘稠症候群(多血症による症状)に対する瀉血治療の前後で,血管内皮機能の変化を評価した.瀉血により多血症および過粘稠による症状は有意に改善したが,血管内皮機能の有意な改善は認められなかった.このような結果は,チアノーゼ型心疾患患者の血管内皮機能に,多血症や低酸素のみならず多因子が関与していることが示唆された。
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