研究概要 |
小麦製品摂取後の運動時にアナフィラキシー症状を呈した患者について,小麦製品の摂取と運動負荷,アスピリンの摂取を組み合わせた誘発試験を行い,小麦による運動誘発アナフィラキシーと確定診断した患者血清を収集した。これらの患者血清について精製小麦グルテン構成蛋白質(α-グリアジン,β-グリアジン,γ-グリアジン,ω-5グリアジン,ω-1,2グリアジン,高分子量グルテニンと低分子量グルテニン)に対するIgE抗体の反応性をドットブロット解析により検討した結果,小麦依存性運動誘発アナフィラキシー患者にはω-5グリアジンに最も強く反応するグループと,高分子量グルテニンに反応する2つのグループがあることを見いだした。 まず、高分子量グルテニンのIgE結合エピトープを決定するために、SPOTsメンブレン(SIGMA-Genosys社)上に高分子量グルテニンのアミノ酸配列を基にデザインしたオーバーラップペプチド(14アミノ酸長、オフセット7アミノ酸)を合成しペプチドアレイを作製した。ドットブロット解析で高分子量グルテニンに対する特異的IgE抗体価が高かった患者6名の血清IgEについて、作製したペプチドアレイに対する反応性を調べた。その結果、血清IgEはいくつかのペプチドに結合する事が明らかとなった。さらに、IgEが反応したペプチドには共通して、QQPGQ, QQPGQGQQ, QQSGQGQ配列が含まれており、これらの3種の配列がIgE結合エピトープであると予想された。 次に、これら3種のペプチド(QQPGQ, QQPGQGQQ, QQSGQGQ)を合成し、患者血清IgEの反応性を調べた結果、それぞれの患者のIgE結合エピトープは、患者1はQQPGQ、患者2はQQPGQGQQ, QQSGQGQ、患者3はQQSGQGQ、患者4はQQPGQ, QQSGQGQ、患者5,6はQQSGQGQであると決定した。
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