研究概要 |
C57BL雄マウスを用い、コントロール群炭酸リチウム(リチウム)投与群、抗うつ薬投与群、リチウム・抗うつ薬併用投与群、それぞれにおいて連続投与を行う。投与終了後に強制水泳実験を施行し、それぞれの群の無動時間を測定し、併用投与が抗うつ効果において優位であるかを検討する。 結果はコントロール群に較べ、両抗うつ薬単独投与及び併用投与において有意に無動時間の短縮がみられた。リチウム単独投与では有意な短縮はみられなかった。パロキセチン・リチウムの併用投与は、パロキセチン単独投与に較べ、有意な短縮はみられなかったが、ミルナシプラン・リチウム併用投与はミルナシプラン単独投与に較べ、有意な短縮を示した。以上から、ミルナシプラン併用投与が抗うつ効果増強において優位であることを示唆する結果が得られた。 以上の結果を基に、リチウムの抗うつ効果への影響を分子レベルにおいて解明するため、リチウムや抗うつ薬の薬理作用への関連が報告されているアポトーシス関連蛋白について第一に検討することとした。マウスにリチウム、ミルナシプランの慢性単独投与及びそれらの慢性併用投与を行い、その海馬においてアポトーシス誘導蛋白であるp53、Baxの発現抑制やアポトーシス抑制蛋白であるBcl-2、Bcl-xLの発現誘導をウェスタンブロッティングによって検討した。その結果、p53とBax、Bcl-xlには有意な変化はみられなかった。しかし、Bcl-2はリチウム・抗うつ薬併用投与群をコントロール群と比較すると有意な増加がみられた。また、リチウム・抗うつ薬併用投与群を抗うつ薬単独投与群と比較した際には増加傾向がみられた。今回の結果より,リチウムの抗うつ薬に対する抗うつ効果の安定化や増強には,アポトーシス抑制蛋白Bcl-2 famiIyの一つであるBcl-2の発現増加が関係している可能性が示唆される。
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