研究概要 |
16年度から17年度にかけて蓄積したデータを基にした予備的研究では、臨床的に副作用が生じ易い症例にCYP2D6*5をもつ頻度が高かった。特に重篤な副作用である悪性症候群(neuroleptic malignant syndrome:以下NMS)を生じた症例に注目すると、同様にCYP2D6*5をもつ頻度が高い傾向にあった。そこで、横浜市立大学附属病院および関連病院の症例を中心にさらに症例を蓄積し、書面により両意の得られた患者のデータを解析し、NMSとCYP2D6の遺伝子多型についての関連を研究した。 対象は53人のNMS患者と112人の健常者(対照群)とし、DNAの抽出処理後、PCRと昭LPを行い、CYP2D6の遺伝子多型(*5,*10,*4,*2XN)を同定し、薬理遺伝学的検討を行った。またMSを引き起こした原因薬剤を同定した。 その結果、*5アレルをもつ頻度はNMS患者群で高かったが対照群と比較して統計学的な有意差はなかった(10.4%対5.4%,P=0.107)。*10アレルの頻度についての関連はなかった。*4アレルと*2XNアレルはNMS患者群で1例ずつ認めたのみだった。そこで、CYP2D6の基質薬剤によりNMSを引き起こしたと考えられた患者を抽出したところ、29入が該当した。この29人の*5アレルの頻度は15.5%であり、対照群と比較して統計学的に有意に高かった(P=0.020)。つまりNMSの発症にCYP2D6*5が影響することを発見した。MSとCYP2D6*5に関する関連研究はこれまでになく、現在国際誌に投稿中である。
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