研究概要 |
臨床的には、SSRI療法に反応しない治療抵抗性の症例に対して新規非定型抗精神病薬であるperospironeおよびquetiaoineによる増強療法が有効性を示す結果が得られつつある。今後は他の非定型抗精神病薬であるrisreridoneやolanzapineとの治療反応性の違いを検討し、強迫性障害患者に対する病態別の薬物選択の有用性について明らかにする。 また、認知行動療法においても、定型的な曝露反応妨害法では十分に効果が上がらない症例に対し、新しい認知行動療法であるEMDRを併用し、治療導入をスムーズにし、外傷体験の処理を行うことで、治療の有効性の向上と期間の短縮化を図っている。養育体験やパーソナリティーと強迫症状との関連を明らかにしていくことで、心理療法的アプローチの導入を図っている。 同時に、治療経過において、Y-BOCS,PI(Padua Inventory)による強迫症状、SPECTによる脳血流の評価、MRI拡散強調画像(DTI),fMRIによる神経ネットワークについての評価を行っている。SPECTにおける脳血流データをSPM softwareにて比較解析を行い、強迫性障害患者では健常対照者と比較して、頭頂部における血流亢進が認められているという結果が出ている。さらにSPECTとDTIおよび臨床症状との相関について解析・検討を進めている。fMRIにおいては、前頭葉機能を反映する課題遂行中に脳賦活状態の検討を行っている。PETにつては、SPECT、fMRIの結果との相関について評価する検討を行っている。認知機能と臨床的強迫症状の変化と脳機能画像を経時的に多面的・縦断的に評価する検討は、現時点ではほとんどなされておらず、強迫性障害の多様性や治療抵抗性に関する神経ネットワークを解明につながり、より有効な薬物療法や認知行動療法が可能になると期待される。
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