研究概要 |
精神科領域では長年電気痙攣療法(ECT)が行われてきたが、最近ではより安全で非侵襲的代替療法として、磁場を応用した反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS : repetitive Transcranial Magnetic Stimulation)の有用性が、多くの臨床的研究で示されている。特に、難治性うつ病、気分障害、統合失調症(精神分裂症)、アルツハイマー病、パーキンソン病等の患者で、磁場刺激による症状改善報告が示されている。磁場刺激後の変動遺伝子の解析をGeneChipで現在解析した。その結果、モノアミン神経系に関与するモノアミントランスポーターに変化があった。モノアミン神経系は上記疾患と深く関わることが知られており、rTMS刺激後のモノアミントランスポーターの機能解析を行った。モノアミントランスポーターは、セロトニントランスポーター(SERT)、ドーパミントランスポーター(DAT)、ノルエピネフリントランスポータ(NET)からなり、シナプス前膜部から放出されたモノアミン神経伝達物質を再取込みし、シナプス伝達を終結させる重要な細胞膜蛋白である。20日磁気刺激後、マウス脳においてSERT mRNA,[3H]Serotonin uptake, [3H]Citalopram bindingはいずれも増加した。一方、DAT, NET mRNA, [3H]Dopamine, [3H]Norepinephrine uptake,3H]Nisoxetine binding(not [3H]GBR12935 binding)は増加した。これらのことは20日磁気刺激がモノアミントランスポーターを変化させることを示しており、モノアミン神経系が関与していると考えられている上記疾患へのrTMSの分子メカニズムを提供するものと考えられる。
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