研究概要 |
メラトニンには、腫瘍細胞のアポトーシスを誘起し、腫瘍の増殖を抑制する抗腫瘍作用や、フリーラジカルから細胞を保護するラジカルスカベンジャーとしての細胞保護作用があることが報告されている。そこで、中枢神経系悪性腫瘍において、メラトニンによる抗腫瘍効果や放射線照射における感受性の変化について検討した。 96穴マイクロタイタープレートを用いて、100μlの培地(イーグルの最小必須培地+10%ウシ胎児血清+ペニシリン100U/ml+ストレプトマイシン100μg/ml)にヒト悪性神経膠腫細胞株U-87MGとBeckerを5×10^3個播種した。その後、CO_2インキュベーターで37℃、5%CO_2の条件下に静置培養し、細胞増殖試験を行った。細胞を播種してから6時間前培養を行い、6,24,48時間後にWST-8溶液10μlを添加して1.5時間呈色反応を行い、生成したホルマザンの吸光度(450nm)をマイクロプレートリーダーで測定し細胞数を算出した。U-87MGは、6,24,48時間後にそれぞれ平均1.3±0.1倍,2.0±0.2倍,4.5±0.2倍に、Beckerは、1.4±0.1倍,2.1±0.2倍,3.0±0.1倍に増殖していた。次に、100μlの培地にU-87MGとBeckerを5×10^3個播種し、同一条件下で24時間前培養を行った。その後、0,1×10^<-7>,10^<-9>,10^<-11>,10^<-13>Mの濃度になるようにメラトニンを添加し、48時間後に同様の方法で細胞数を計測した。U-87MG、Beckerともに、0Mに比べて1×10^<-7>,10^<-9>,10^<-11>Mのメラトニンを含む培地において細胞の増殖が抑制される傾向がみられた。 同様の条件でU-87MGとBeckerを6時間前培養し、0,1×10^<-7>,10^<-9>,10^<-11>Mの濃度になるようにメラトニンを添加した。その後、室温(約25℃)で4Gy(線量率約0.9Gy/min)のガンマ線照射を行い、48時間後に細胞数を計測した。U-87MGでは、0Mと比較して他の全てのメラトニン濃度において細胞の増殖が抑制される傾向にあった。一方、Beckerでは、どの濃度のメラトニンにおいても細胞の増殖抑制はみられなかった。 メラトニンには、ある種の中枢神経系悪性腫瘍に対して増殖を抑制する働きがあることが示唆された。また一方で、腫瘍細胞によっては、その細胞保護作用から放射線感受性を低下させる可能性があることも考えられた。
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