研究課題/領域番号 |
16790723
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
放射線科学
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森田 明典 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90334234)
|
研究期間 (年度) |
2004 – 2005
|
研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
|
配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2005年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2004年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
|
キーワード | オルトバナジン酸ナトリウム / p53 / カスペース / DNA損傷 / アポトーシス / カスパーゼ |
研究概要 |
本研究ではオルトバナジン酸ナトリウム(バナデート)のアポトーシス抑制効果の解明を進め、その作用点(標的分子)を明らかにすることにより、アポトーシス制御による新しいタイプの放射線防護剤開発の一助となることを目指した。 実験を進めた結果、バナデートは放射線や抗癌剤によるアポトーシスを抑制し、他の幾つかの刺激によるアポトーシスは抑制しなかったことから、DNA損傷が引き起こすアポトーシス経路を主として抑制していると考えられた。またバナデートは、直接のカスペース活性阻害効果は認められなかったが、バナデート処理した照射細胞のカスペース活性化を抑制することによりアポトーシスを阻害していたことが明らかとなった。そこで、カスペース活性化の上流反応であるミトコンドリア膜電位低下やBax構造変化に対する効果を検討したところ、これらの反応も抑制したことから、バナデートはミトコンドリアの上流に位置するアポトーシス過程に作用していると考えられた。そこで更に上流のアポトーシス過程についてバナデート効果を詳細に解析した結果、バナデートは放射線応答の重要な初期過程に関わる転写因子p53に作用し、その構造を不活性型構造に変化させること、また、不活性化されたp53にはDNA結合能がなく、照射後のp53応答遺伝子の転写活性化が行えなくなっていることを見出した。また、p53遺伝子型の異なる細胞株、およびp53 siRNAの細胞内恒常発現によって得られたp53発現のノックダウン細胞株の比較から、バナデートの抗アポトーシス作用のp53特異性が明らかとなり、バナデートの標的分子はチロシンボスファターゼではなくp53であると結論付けられた。本研究はこれまでチロシンホスファターゼ阻害剤として用いられていたバナデート作用の既成概念を覆しただけでなく、バナデートをリード化合物とするp53阻害性の放射線防護剤開発への道を開いた。
|