研究概要 |
治療現場からの要望が高まりつつある加速器中性子源を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)実現のため、照射場調整部が小型化できるため照射体系設定の自由度が高いという長所を持つしきい値近傍^7Li(p,n)直接中性子利用の研究を行った。 まず、本研究に必要不可欠な中性子及びγ線の模擬計算手法の有効性は、中性子及びγ線の角度依存性に着目し、人頭ファントム内線量分布の形や、その強度の陽子エネルギー及びターゲット-ファントム間距離による変化に重点をおいて示した。 次にこの計算手法により、BNCTに重要な^<10>B(n,α)^7Li反応線量の寄与を大きくするために導入したBoron-Dose Enhancer (BDE)を用いた場合の照射特性を検討した。具体的には、陽子ビーム径を変更した際の特性を、(1)治療線量条件を満たす生体内領域の深さ、(2)加速器に必要とされる陽子電流値、(3)それに対するLiターゲットでの発熱密度を指標として調べた。陽子ビームは1.900MeVと仮定した。その結果、LiターゲットアッセンブリーとBDEの距離38mmの体系において人頭ファントムと同程度までの陽子ビーム径について、陽子ビーム径が大きくなるほど、薄いBDEで治療線量条件を満たす領域深さを拡大でき、Liターゲット発熱密度が減少するという長所を見出した。一方必要陽子電流は大きくなり、都合が悪いことを明らかにした。このとき、例えば18cmφ陽子ビームに対して、Liターゲット発熱密度が139W/cm^2と冷却可能性が予想される値であるとの知見を得た。本研究で得たLiターゲット発熱密度は、システム設計において重要なターゲット冷却系を考える際の目安としても利用できる。また、必要な陽子電流は概ね10〜20mAで、陽子エネルギー広がりは±10keV程度まで許容できることを明らかにした。
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