研究概要 |
背景:脳内における代謝物サイクルはRothsteinらにより明らかにされているが,脳機能の変化によるこれらの変化を定量することは困難であった.しかし,3T超高磁場MR装置の使用で,時間分解能を向上させた測定が可能となり,fMRIと併用したダイナミックなMRS測定が可能となることが予想される. 目的:超高磁場MR装置を用いて特に時間分解能の向上を図ることにより,1)脳機能による代謝物の動態を信頼性や再現性よく解明し,2)毛細血管床と神経細胞の間で乖離が確認されている代謝物動態の解明を目指した. 方法:1)高感度な8ch頭部用コイルを用いた際の定量性について検討した上で,2)fMRIを用いて視覚野を同定した上で同領域にVOIを設定して同様に60秒の測定時間でMRSを測定し,脳機能賦活時の代謝物の変化を観察した.測定はshort TE法を用い,スペクトルの処理はLCModelを用いた.測定には,GE社製Signa Excite3.0Tを使用した. 結果:1)健常人ボランティアにて8ch頭部用コイルで測定した結果,内部標準法を用いることにより代謝物測定濃度の定量性を確保できることが確認できた.2)同意を得た複数のボランティアで視覚野における賦活時の代謝物変化を捉えることを試みたが,60秒の測定時間では微量代謝物の変化を有意差を持って捉えることはできなかった. 考察:脳機能賦活時のGlc低下,Lac上昇の傾向を見ることはできたが,有意差を持って変化を捉えることはできなかった.これは,3TMR装置を用いても微量代謝物測定には感度が十分でないことが最もの原因であると考えられた.また,定量性を担保するに最低限の条件である60秒測定に制限を受けた脳機能賦活に用いた60秒単位のブロックデザインが,代謝物変化を捉えるに十分なものかどうかの検討が必要であることが示唆された.
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