研究概要 |
非小細胞肺癌や乳癌における分子標的治療としてepidermal growth factor (EGFR)に対するZD1839 (Iressa)とHER-2に対する抗HER2抗体であるtrastuzumab (Herceptin)の有用性が報告されている。しかし各々単剤での治療効果は満足できるものではない。非小細胞肺癌においてEGFRとHER2の同時発現がしばしば見られる。今回、この2剤併用での抗腫瘍効果の増強効果を検討し、臨床応用の可能性を探った。 4種の肺癌細胞株(A549,NCI-H23,NCI-H727,NCI-H661)におけるEGFR (HER1),HER2,HER3,HER4の発現量は様々であったが、ZD1839とtrastuzumabの併用下のA549で有意な細胞数の減少を認めたが、NCI-H23では殆ど変化を認めなかった。ZD1839とtrastuzumabの併用下のA549でp27の増加とcyclin E,D1の低下を伴うG1期休止を認めたがNCI-H23では認めなかった。またZD1839とtrastuzumabの併用下において、EGFR, HER2, extracellular signal-regulated kinase (ERK)-1/2, Aktのリン酸化阻害がA549で認められたがNCI-H23では認められなかった。以上の結果より、ZD1839存在下のA549細胞においてEGFR/HER2ヘテロダイマー形成が増加しする一方、NCI-H23細胞においては起こらないことが示された。ZD1839とtrastuzumabの併用療法は、EGFRとHER2を共発現している非小細胞肺癌の治療効果を改善させる可能性が示唆された。
|