本研究においては、ヒト下垂体腺腫組織と細胞におけるHypoxia inducible factors (HIF)及びVEGFの発現について解析することを目的とした。 手術にて摘出した・各種下垂体腺腫よりmRNAを抽出し、β-actinを内部コントロールとしたrealtime PCR法により、各種下垂体腺腫におけるVEGF mRNA及びHTF-1α mRNA発現を定量的に解析した。その結果、VEGF mRNA及びHIF-1α mRNAはともに下垂体腺腫内に発現していることが明らかとなった。更に、それらの発現量は腫瘍の大きさや年齢、性別とは有意な相関を示さなかった。腫瘍の種類別に見ると、HIF-1α mRNA発現はGH産生腺腫に高い傾向があったが、VEGF mRNAは腫瘍の種類によって有意な違いはなかった。VEGF mRNA発現とHIF-1α mRNA発現との間には統計学上有意な相関関係はなかった。 これとは別に手術にて摘出した各種下垂体腺腫を、パラフィンブロックに包埋後、免疫組織化学的手法を用いて下垂体腺腫におけるVEGF及びHIF-1α蛋白の発現を解析した。その結果、両蛋白は下垂体腺腫細胞内に発現していることが明らかとなった。両蛋白のco-localizationについて解析すべくVEGF及びHIF-1α蛋白の2重染色を行った結果、両蛋白が一部の細胞でのみ共存していることが明らかとなった。 以上の結果より、HIF-1αの調節因子であるVEGFが下垂体腺腫組織内においても一部HIF-1αにより調節されている可能性が示されたが、HIF-1α以外の様々な因子によっても調節されている可能性も示唆された。
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