研究概要 |
関節リウマチでは種々の免疫担当細胞が滑膜に浸潤し,主としてT細胞とB細胞により構成されるリンパ球集塊を形成することがある.リウマチ滑膜に見られるリンパ球集塊は,その中に濾胞樹状細胞を有するfollicular synovitisとそれを有さないaggregate synovitisに分類される.Follicular synovitisに見られるリンパ球集塊は,末梢リンパ節などの二次性リンパ器官に見られる微細構造に酷似しており,その維持にはB細胞が重要な役割を果たしている.一方,近年B細胞の増殖にB lymphocyte stimulator(BLyS)とその受容体であるa proliferation-inducing ligand(APRIL)が関与していることが明らかにされた.本研究では,リウマチ滑膜に見られるリンパ濾胞と,BLyS-APRILの関係を調べた. 滑膜よりmRNAを抽出し,定量的PCRでBLyS, APRILを測定した.APRILはaggregate synovitisに比べ,follicular synovitisで有意に高値を示した.しかし,BLySに関しては,有意差は認められなかった.次に,BLyS-APRILのin vivoでの役割を調べる目的で,リウマチ滑膜をSCIDマウスに移植したキメラモデルを作成し,抗BLyS療法を行った.治療にはTACI-Ig (APRIL, BLyS, APRIL/BLySに対するdecoy receptor)を用いた.Follicular synovitisでは,TACI-Igの投与に,より滑膜の濾胞構造は破壊され,免疫グロブリンの産生は有意に低下した.これに対して,TACI-Igのaggregate synovitisに対する効果は弱く,免疫グロブリンの産生量は有意に変化しなかった.
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