研究概要 |
これまでの我々の研究により、吸入麻酔薬イソフルランが心筋活動電位持続時間を濃度依存性に2相性に延長、短縮することを報告してきた。(Suzuki A. Anesthesiology 97,2002) また、慣習的に心筋イオンチャネルの研究は室温下で、しかも各チャネルごとに異なる電位プロトコールを用いた検討が行われてきたが、我々は室温条件ではタンパクが十分機能できないために麻酔薬がチャネルに与える影響が異なる可能性を報告した。(Suzuki.A, Anesth Analg 96,2003) 今回の実験において、日本において小児から老人まで臨床で使用されているセボフルランも、モルモット単離心筋を用いたパッチクランプ法による検討で、濃度依存性に2相性に持続時間を延長、短縮し、使用濃度に応じて心筋リズムへの影響が変化しうることが示唆された。 その機序として、活動電位のプラトー相で特に活躍するカルシウムチャネル、および遅延整流カリウムチャネルへの異なる程度での抑制が関与していることが判明した。 特に遅延整流Kチャネルはセボフルランによる抑制が強く、活動電位の延長に重要な役割を果たしていると考えられたため、遅延整流カリウム電流をrapid、slowの2成分に分けてセボフルランの影響を検討した。その結果、セボフルランはIKr、IKsの2つの成分のなかでも、IKsをより強く抑制することが明らかとなった。 このことから、セボフルランによる活動電位の延長は、いわゆる薬剤誘発性のQT延長症候群がIKrを介して活動電位および心電図上のQTを延長するのとは異なる機序で生じていることが示唆された。本研究の要旨はEuropean society of anesthesiologist meeting 2006, Spainで発表された。
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