研究概要 |
(研究計画)心臓血管手術に於いては虚血再還流障害等が原因で、高サイトカイン血症によりSIRSに陥る危険性が知られている。従って適度な炎症性サイトカイン産生抑制は患者に利益をもたらす可能性がある。よって心臓血管外科周術期においてグルココルチコイド投与がサイトカインバランスを修飾し、患者のOutcomeを改善するか否かを検討する事が一つの目的であった。またラットを用いた実験に於いて同様の結果が得られる実験系を確立する事がもう一つの目的であった。 (研究経過及び成果)ストレス用量のHydrocortisoneの投与(2-3mg/kg)により血漿中及び肺胞上皮被覆液中のIL6,IL8,CD40,MMP9産生の抑制,IL10濃度の上昇と共に、血漿中Fatty Acid Binding Protein, NT-proBNP, Troponin I濃度の低下を認めた。よってストレス用量のグルココルチコイド投与が心筋保護に働いている事が示唆された。ラットを用いた動物実験においては、冠状動脈前下行枝結紮モデルに於いてIL10発現アデノウイルス(Ad-IL10)を尾静脈より注入することにより、冠状動脈前下行枝結紮による心筋梗塞発症後の血漿中Troponin I濃度の上昇が抑制された。従って、ステロイド投与による血漿中IL10上昇が心筋保護に作用していることが示唆された。これらの結果は学会にて発表予定である。また、心拍動下冠動脈バイパス術における術後心房細動の予測因子の解析研究発表は2004年の国際心臓血管麻酔学会において藤田昌雄賞にノミネートされた。
|