研究課題/領域番号 |
16790900
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
麻酔・蘇生学
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研究機関 | 関西鍼灸大学 |
研究代表者 |
武田 大輔 関西鍼灸大学, 鍼灸学部, 講師 (70310737)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2005年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2004年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
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キーワード | パッチクランプ / 脊髄後角 / ニコチン / アセチルコリン / 疼痛 / GABA / グリシン / 抑制性シナプス後電流 / 制御性シナプス後電流 |
研究概要 |
タバコに含まれるアルカロイド成分であるニコチンを実験動物に髄腔内投与すると、鎮痛効果を認めることが約70年前より知られている。しかしながら、このニコチンによる鎮痛作用機序は、明らかでない。そこで、脊髄におけるニコチンの鎮痛作用機序を検討するためラットより横断スライス標本を作成した。作成したスライス標本の後角細胞(後角第II層と第V層)よりパッチクランプ記録を行い電気生理学的にニコチンの作用を検討した。ニコチン投与により、脊髄後角より記録したsIPSC (spontaneous inhibitory post-synaptic current;抑制性後シナプス後電流)は、その頻度を増した。つまり、ニコチンは、脊髄での主な抑制性伝達物質であるGABAまたはグリシンの開口放出の増強をもたらした。この増強作用はニコチン受容体のアンタゴニストであるメカミラミンで完全に拮抗されたことにより、抑制性ニューロンに分布するニコチン受容体を介してのGABAまたはグリシン放出の賦活作用であることが分かった。これらの応答は脊髄後角第II層・V層の両方のニューロンで記録された。ニコチン受容体はαとβサブユニットの5量体で形成され様々なサブタイプを持つ、そこで脊髄後角におけるニコチン受容体サブタイプが脊髄より上位の中枢でよく観られるサブタイプと同様であるかどうかを知るために中枢に多いといわれるα4β2またはα7サブタイプに特異的に反応するアゴニストを投与したところ、後角第II層ではこれら両アゴニストに対する応答は観られなかったが、第V層では、これらのアゴニストによってsIPSCの頻度が増強した。更にII層・V層の細胞そのもの(inter-neuron)に発現するニコチン受容体を検討するために同じアゴニストを投与したところ、V層のニューロンがα4β2タイプのアゴニストのみに反応し内向き電流を発生させた。II層のニューロンはα4β2とα7タイプのアゴニストのいずれにも応答しなかった。そこで、末梢神経側に多く発現するといわれているα3β4タイプのアゴニストを投与したところ後角第II層でsIPSCの頻度の増強を起こすとともに内向き電流も認めた。以上より、脊髄後角第II層とV層におけるGABAニューロンやグリシンニューロンに発現するニコチン受容体のサブタイプが異なることを電気生理学的に認めた。 痛みを修飾する抑制性ニューロンに特異的に発現するニコチン受容体を明らかにできれば、将来、疼痛緩和薬として寄与する可能性が示唆される。
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