研究概要 |
癌抑制遺伝子BRCA1はBARD1と複合体を形成し、ユビキチンE3リガーゼ活性を持つ。特定のタンパクはユビキチン化されて、プロテアソーム系を介して分解されるが、BRCA1/BARD1複合体にユビキチンリガーゼ活性を持つため、タンパク分解に関与しているものと推測されているが、分解標的となる遺伝子については明らかではない。そのため、標的候補遺伝子を検索するため以下の手法により検討した。 1)GST BRCA1,GST BARD1を大腸菌に発現させて精製した。これはGSTとユビキチンリガーゼ活性を保持するために必須なN末端約100アミノ酸を持つ融合遺伝子である。 2)上記の発現タンパクを、^<35>Sによりメタボリックラベルした細胞抽出液とともにインキュベーションすることにより、ネガティブコントロールと比較することにより、標的候補のタンパク質バンドを得た。候補タンパクの分子量は、約250kD,150kD,70kDである。 3)現在上記のタンパク質バンドを、質量解析法により同定しているところである。 上記のデータとは別に、エストロゲンレセプター(ER)の、転写共役因子作用を持つ癌抑制遺伝子の機能解析を行い下記のようなデータを得た。現在British Journal of Cancer誌に投稿中である。 1)ERには、αとβのサブタイプがあるが、家族性大腸癌の原因遺伝子であるhMSH2は、細胞内およびin vitroの系においてERα、βと結合する。 2)ERαとhMSH2の結合は、リガンド(エストロゲン)依存的であるのに対し、ERβとhMSH2の結合は、リガンドに依存しない。 3)ERαのリガンド依存的転写活性増強作用に対し、hMSH2は増強作用をもたらすことを、ルシフェラーゼ活性測定にて示した。
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