研究概要 |
1.カチオニックリポソームによる遺伝子発現効率 卵巣癌細胞株ES-2,HRA及びNakajimaに,Green fluorescent protein (GFP)発現プラスミドを,カチニオニックリポソーム(TFL-08)を用いて血清添加培地で導入し,発現効率をfluorescein activated cell sorter (FACS)で測定した.24時間後の遺伝子発現効率は,ES-2では32.3%,HRAでは26.5%と高い発現効率であったが,Nakajimaでは7.3%と低値であった.このように,細胞株により発現効率に3.6〜4.5倍の差が見られた. 2.エンドソーム阻害剤による影響 エンドソーム阻害剤であるクロロキンを遺伝子導入時5時間培地に添加したところ,それぞれの細胞株で濃度依存性に発現効率は低下し,100μM添加時に約4分の1に減少した. 3.微小管阻害剤による影響 微小管阻害剤であるコルヒチンを遺伝子導入時に同様に150nM添加したところ,ES-2,HRAでは変化が見られなかったが,Nakajimaにおける発現効率は2.1倍に上昇した.ビンクリスチン150nM添加時でも2.3倍上昇した. 4.微小管重合安定化剤による影響 微小管重合安定化剤であるパクリタキセルでは発現効率の上昇は認められなかった.従って,発現効率の低い細胞での遺伝子治療応用には,微小管重合阻害剤併用は有効な手段だと考えられ,さらにその機序を検討することとした. 5.遺伝子導入効率の検討 遺伝子導入の結果をGFPというレポーター蛋白だけでなく,発現効率の差の機序を解明するために,実際に導入したプラスミドがどれくらいの割合で細胞内に取り込まれているのか,また細胞内に取り込まれた遺伝子量を定量するため,PCR法を用いての検討を始めたところである.
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