研究概要 |
子宮腺筋症病変におけるI kappa Bのユビキチン化の亢進が,その病変形成に関与する可能性を,昨年度はヒトの検体を用いて示したが,本年度は,ラット子宮内膜症モデルの作成による検討を開始した.SDラットの腹膜上皮に,子宮内膜を自家移植し,内膜症病変の形成を確認後,GnRHアゴニスト(GnRHa)を4週間連日腹腔内投与した.現在,GnRHaの子宮内膜症病変に与える影響などにつき検討中である. 次にサイクリン依存性キナーゼ(CDK)インヒビターp27Kiplの子宮内膜症増殖への関与についても検討を開始した.p27Kiplによる細胞増殖抑制は,p27蛋白のユビキチン化による分解で制御されており,ユビキチンリガーゼのSkp2の関与が知られている.そこでヒト正常子宮内膜および子宮腺筋症子宮内膜におけるp27の発現様式と,子宮腺筋症に対するGnRHa治療の影響について検討した.p27は子宮内膜腺上皮(GE)の細胞核に存在した.子宮腺筋症正所性子宮内膜(EuE)のGEでは,増殖期に比べ分泌期で有意にp27の核染色陽性率が上昇し,正常子宮内膜(NE)でも同様であった.さらにEcEのKi67陽性率とp27陽性率,Skp2陽性率とp27陽性率の間には逆相関を認めた.しかし子宮腺筋症異所性子宮内膜(EcE)でのp27陽性率には,EuEでみられた周期性が存在しなかった.またGnRHa使用群ではEuEのGEで,増殖期に比し有意にp27陽性率が高値となったが,EcEについては有意差を認めなかった. p27は子宮腺筋症の正所性および異所性子宮内膜において異なる発現様式を示し,その発現量は子宮腺筋症病変の増殖活性と逆相関した.
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