研究概要 |
M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)活性を欠如するop/opマウスを用いて破骨細胞形成および破骨細胞性骨吸収の観察を行った。M-CSFは破骨細胞形成必須の因子とされており、このマウスでは骨吸収がほとんどおこらず、破骨細胞もほとんど認めないとされている。 1.op/opマウスには骨組織においてほとんど破骨細胞を観察できないが、加齢に伴い若干ながら破骨細胞の数の増加が認められた。 2.このマウスに対し卵巣摘出を行い閉経状態を作成したところ有意に破骨細胞数の増加を認めた。 3.卵巣摘出と同時にエストロゲンの投与を行ったところ、術後の破骨細胞数の増加は認めなかった。 これらのことからエストロゲン欠乏はM-CSF活性のない状態においても破骨細胞を増加させ、破骨細胞性骨吸収を亢進させることが示された。 4.骨組織における破骨細胞形成に関連する種々の因子のmRNA発現の変化を観察したところ既知のIL-1,IL-6,TNF-α,RANKLの発現亢進に加え、VEGFの発現亢進が認められた。 5.血清中のタンパク定量においてもVEGFの濃度はエストロゲン欠乏状態では上昇していた。 6.卵巣摘出と同時にVEGF中和抗体の投与を行ったところ、術後の破骨細胞数の増加は有意に抑制された。 以上のことから、M-CSF活性を欠如するop/opマウスではエストロゲン欠乏状態において骨局所におけるVEGF産生が亢進することにより破骨細胞の分化・増殖が促進され骨吸収が亢進することが示された。 この現象が、このマウスに特異的に生じているものなのか、それともM-CSF活性を持つマウスにおいても観察されるのかを今後検討していきたいと考えている。
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