研究概要 |
子宮内膜癌は生活様式の欧米化と,環境の変化に伴って近年増加の一途をたどっているが,その発癌機構,進展様式には今なお不明な点が多く,その病態生理の解明と有効な予防法および治療法の開発が待たれている.一般に固形腫瘍は,腫瘍上皮細胞およびそれを取り囲むように存在している間質細胞によって構成されているが,本研究においては,散発性子宮内膜癌の腫瘍上皮細胞と間質細胞における遺伝学的変化を解析することにより,子宮内膜癌発癌過程におけるそれぞれの細胞の関与ならびに相互作用について検討することを目的とした. 1.十分な説明のもと同意を得た,散発性子宮内膜癌症例48例を用いた.手術により摘出した組織を腫瘍上皮細胞,腫瘍間質細胞,および正常上皮細胞に分離した.これらの細胞からそれぞれGenomic DNAを抽出し,以後の解析に用いた. 2.これまでに子宮内膜癌において高頻度にヘテロ接合性の消失(Loss of heterozygosity:LOH)が同定されている領域に存在するマイクロサテライトマーカーを用いて,腫瘍上皮細胞および間質細胞それぞれにおけるLOHの有無および頻度,さらにマイクロサテライト不安定性(MSI;microsatellite instability)についても腫瘍上皮細胞および間質細胞の双方において解析した. 3.これまでに子宮内膜癌において最も高頻度に変異の同定されているPTEN遺伝子およびTP53遺伝子の変異の有無をPCR-SSCP(single strand conformational polymorphism)法およびDirect sequencing法を用いて,腫瘍上皮細胞および間質細胞の双方において解析した.
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