研究概要 |
1.口蓋扁桃におけるTLR発現の検討 対象は腎生検にて確定診断され、扁桃摘出術を受けたIgA腎症患者および非IgA腎症患者(慢性扁桃炎、扁桃肥大)である。これまでに手術的に得られた口蓋扁桃が凍結保存されており、これらを用いて実験を行う。なお、患者からこれらの扁桃組織に関して手術前に採取組織の研究使用に対する同意書を得ている。まず、扁桃組織からmRNAを抽出し、RT-PCR法にて遺伝子レベルでのTLR2,3,4,5,9の発現をリアルタイムPCRにて定量した。TLR3においてIgA腎症では慢性扁桃炎に比べて有意に発現が少なかったが、他のTLRでは両者の間に優位な差は見られなかった。TLR9は他のTLRに比べて有意にその発現が多く認められた。 2.リガンド刺激による扁桃単核細胞におけるIgA、サイトカインの産生について TLRに対するリガンドを用いて扁桃単核細胞を刺激する。各種TLRのリガンドとしてインフルエンザ菌外膜抗原とマイコプラズマのリポペプチド、G(+)菌のペプチドグリカン、G(-)菌のLPS、細菌の鞭毛のフラジェリン、CpG DNAやウイルスのdsRNAを用いる。扁桃単核細胞は、手術的に得られた扁桃を機械的に破砕しメッシュで処理した後にFicoll-Hypaqueを用いて単核細胞を遠心分離して得られる。分離した細胞をリガンドと共にRPMIで培養した後、上清中のIgA、IgA産生に関与するサイトカイン(IL-10,TGF-β,IFN-γ)をELISAを用いて測定した。まず、IgAやサイトカイン産生についてインフルエンザ菌外膜抗原単独刺激を行った。IgA腎症患者の扁桃細胞は、IgAおよびIL-10、TGF-βの産生が非IgA腎症患者の扁桃細胞よりも有意に増加していた。 3.TLRを介したリガンド刺激におけるIgA産生亢進に関するシグナル伝達機序の検討 リガンド刺激によりTLRのシグナル伝達経路であるTRAFおよびNF-κBの活性化をウェスタンブロット法にて検討した。また、TLRへのリガンドの結合によりJNKの活性化が知られており、MAPキナーゼを介したシグナル伝達系としてp38、JNK、ERK5のリン酸化について免疫沈降法にて確認した。
|