研究概要 |
頭頸部悪性腫瘍の発症にかかわるゲノム構造異常を解明するために,我々がこれまで頭頸部扁平上皮癌に行ってきたCGH法による染色体のコピー数の変化の解析およびFISH法で検出した染色体の数的異常の解析のデータの蓄積をさらに進め,頭頸部領域での発生母地別の比較検討を行った.さらに前癌病変についても解析を行い,発癌における時間的な変化の過程を追求した.比較検討の結果から,染色体コピー数の増加を示す遺伝子増幅領域,または染色体コピー数の減少を示す遺伝子欠失領域に存在する頭頸部悪性腫瘍の発症にかかわる可能性を持つ標的遺伝子候補を同定し,さらにそれらの標的遺伝子についてDNAメチル化,クロマチン構造の変化,転写調節因子などのエピジェネティックな要因との関連を検討するために,methylation specific PCR法を用いたDNAのメチル化の検索を行った.すでに頭頸部悪性腫瘍においてもm-RNAレベルでの発現変化を検出し,胃癌や大腸癌などの共通欠失領域である1p36に含まれるRUNX-3や,肺癌等で発現の変化が報告されており,喫煙と関連が示唆されるMGMT,腫瘍の転移に関連するDAP-Kなどいくつかの標的遺伝子についても同様にメチル化の検索を行い、それぞれの遺伝子のメチル化を検出した.得られたデータから頭頸部悪性腫瘍の術前診断,予後診断への応用の可能性を検討する.本研究で捕らえた染色体遺伝子の構造異常とデータベース化した臨床経過(リンパ節転移,遠隔転移の有無,抗ガン剤耐性,重複癌など)とを比較し,診断,治療に有益な情報を得られるか否かの検討をさらにすすめる.
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