研究概要 |
1.糖尿病網膜症の手術検体における蛋白糖化最終産物の定量 増殖性糖尿病網膜症を含め様々な眼疾患の治療目的で行われた硝子体手術時に採取された検体において,蛋白糖化最終産物の量を定量した.その結果,糖尿病網膜症では,網膜剥離や黄斑円孔を含めたほかの疾患に比較して優位に硝子体中の蛋白糖化最終産物濃度が増加していることが明らかになった.また,糖尿病網膜症の中でも,糖尿病性黄斑浮腫において特に蛋白糖化最終産物濃度が増加していた.また,硝子体中の蛋白糖化最終産物濃度は,年齢や血液中のHbA1c濃度には関連が低く,糖尿病の罹患年数に関連が深いことが明らかになった. 2.実験的糖尿病モデル動物における蛋白糖化最終産物の局在 ストレプトゾシン投与によりインスリン欠乏型糖尿病を誘発した.また,50%ガラクトース食をラットに与え,実験的糖尿病状態を誘発した.両モデルにおいて,角膜,水晶体,網膜において蛋白糖化最終産物の沈着を観察した.これらの組織は,糖尿病によって角膜障害・白内障・網膜症を発症する糖尿病の標的組織である.よって,蛋白糖化最終産物の沈着は糖尿病合併症の引き金となりうると考えられた.また,抗酸化剤であるアミノグアニジンを内服させることにより,眼における蛋白糖化最終産物の沈着が減少することを明らかにした.このことは,糖尿病において眼局所における酸化ストレスの亢進が蛋白糖化最終産物の沈着に重要な役割を果たしていることを示しており,抗酸化薬が糖尿病眼合併症の予防に利用可能である可能性を示している. 3.角結膜疾患における蛋白糖化最終産物の沈着 瞼裂斑は加齢に伴う代表的な眼合併症の一つである.また,spheroid degenerationは赤道付近においては失明原因に直結する角膜の変性疾患である.我々は,旅疾患における角結膜の沈着物が蛋白糖化最終産物であることを組織学的に証明した.
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