今回の研究では、眼科手術用ヒト羊膜を生体コンタクトレンズとしてとらえ、その物理化学的性状の解析を様々な方法を用いて解析を行た。まず我々は、眼科手術用ヒト羊膜の正確な厚さについて、トノペンを用いて測定した。その結果、羊膜の厚みは131.9+/-31.4μmであることを見出した。さらに我々は眼科手術用ヒト羊膜の含水率を測定(5人の異なるドナーから採取した羊膜を真空デシケーター乾燥前後で重量を測定)し、その値が96.8+/-0.8%であることを報告し、酸素透過率を142.8+/-4.7と試算した。また、ウサギを使った羊膜カバーの下の酸素分圧の測定(10匹のウサギに対して、片眼には羊膜を移植し、片眼にはソフトコンタクトレンズを装着する。酸素分圧測定器(PO2100DWインターメディカル)を用いて白金のセンサー電極を角膜中央の羊膜下あるいはコンタクトレンズ下に設値し酸素分圧を測定し、酸素透過係数(Dk値)を決定する)では、その実測値が94.9+/-2.9mmHgとなることをみいだし、この値は治療用ソフトコンタクトレンズのそれ(59.1+/-4.9)に比べて大変に高く、羊膜は優れた眼科用医療材料であることを証明した。この結果はAmerican Journal of Ophthalmology誌に報告した。 さらに、羊膜上から非接触式眼圧計で測定した眼圧は、羊膜なしのときと比べて変化が無いことを見出した。その結果、眼圧測定時の羊膜の物性が治療用ソフトコンタクトレンズと同様の傾向を示すことが証明でき、American Journal of Ophthalmology誌に受理された。
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