研究概要 |
加齢黄斑変性症の危険因子として太陽光曝露がある。この疾患の発症に関わる遺伝子発現の変化を追究するために、ラット網膜光傷害モデルにおける遺伝子発現解析を行った。 1.Wistar系ラット(10週齢、♂)に対して24時間の暗順応後、0時より3時間、1,000lxの照度で蛍光灯照射すると、3?4日後には一部の視細胞において細胞消失が認められる。一方、Lewis系ラットでは、このような現象は認められない。これらにおいて、光照射直後の、未だ形態変化が認められない神経網膜(網膜色素上皮細胞は含まない)の総RNA画分を対象にマイクロアレイ解析を行った。これら2系統のラット間での遺伝子発現変化に関して、少なくとも片方で変化を示した遺伝子数は396遺伝子であり、さらに2系統間で共に変化を示したのは44遺伝子であった。現在、この396遺伝子を分類し、網膜光傷害モデルにおける遺伝子発現変化とラットの系統差との関連について検討を進めている。また、今回使用したアレイ上には約3万種の遺伝子情報が集積しているが、多くのESTが今回の396遺伝子の中にも含まれており、これらをクローニング解析することで、新規の遺伝子が発見されることが期待される。 2.1,000lxまたは3,000lxで12時間光照射したWistar系ラットから網膜組織凍結切片を作成し、rat transferrin receptor(TfR)に対する特異抗体OX-26を用いた免疫組織化学染色を行った。光照射した時に限り、TfR発現の上昇が網膜色素上皮層に特異的に起きていた。3,000lxで照射した時は、この陽性部位が眼球全周に存在したが、1,000lxでは傷害の程度が小さく、TfR発現の上昇は網膜の後極部上側に限局していた。この部位は光照射により、視細胞のアポトーシスを伴った細胞消失部位と一致する。このことから、網膜光傷害において鉄代謝異常が関係することが示唆された。この成果の一部は、第27回日本光医学・光生物学会および第28回日本分子生物学会にて発表した。
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