研究概要 |
NMDA網膜障害での小胞体ストレス関連たんぱくCHOPの誘導についての一連の実験を行った。マウスの硝子体にNMDAを注入後、CHOPのmRNAの誘導をreal-time RT-PCRにて調べたところ、2時間後にCHOP mRNAの最大の誘導がみられた。しかし、PBSを硝子体投与したコントロール実験、およびMK-801(NMDA受容体阻害薬)の前投与後にNMDAを硝子体注入したマウスでは、その誘導はわずかであった。さらに、免疫染色による網膜内での局在変化を調べると、網膜神経節細胞層でこのCHOPが特異的に強く誘導されることがわかった。Western blotを用いて網膜全体のCHOP蛋白の変化を調べたところ、無処置、PBSを硝子体投与したコントロール実験、およびMK-801の前投与後にNMDAを硝子体注入したマウスでは、CHOP蛋白の有意な変化は見られなかったが、NMDA硝子体注入マウスでは有意な発現上昇がみられた。 さらに、NMDA網膜障害での野生型とCHOPノックアウトマウスの網膜障害の検討を行った。24時間後にTUNEL染色を行い、一週間後に網膜の形態計測を行った結果、比較的低濃度のNMDA障害においてはCHOPノックアウトマウスで有意に細胞死が抑制され、さらに内網膜層、内顆粒層の厚さも保たれ、NMDA障害に抵抗性があることがわかった。しかし、NMDAの濃度を濃くすると、その抵抗性はみられなくなった。高濃度NMDAではCHOP以外の細胞死の経路が、より重要になると考えられた。これらの一連の結果はJournal of Neurochemistry誌に発表した(Journal of Neurochemistry 96,43-52,2006)。
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