研究概要 |
骨細胞は骨代謝においてカルシウムセンサーやメカノセンサーとして重要な役割を果たすが,単離が困難であることからin vitroでの解析が難しく,骨細胞分化や機能発現のメカニズムはほとんど解明されていない。そこで,骨細胞分化に関わる転写因子と骨タンパクを検索するためにin vitroの実験系を確立すべく,rat calvariaからコラゲナーゼおよびEDTAを用いて段階的に細胞を分離し(fraction I~VI)(Mikuni-Takagaki et al.,J Bone Miner Res 10:231-242,1995),初代骨芽細胞(fraction III)と初代骨細胞(fraction VおよびVI)の転写因子mRNA発現(Osx,Runx2,Dlx5,Msx2およびAJ18)と骨タンパクmRNA発現(type I collagen,ALP,OC,MGP,BSR,OF45およびOPN)をRT-PCR法で比較検討した。 転写因子のOsx遺伝子はfraction III,V,VIでほぼ同じ発現量を示したが,Runx2,Dlx5,Msx2およびAJ18遺伝子の発現はfraction V,VIで顕著に減少した。骨タンパクのtype I collagen, ALP,OC,およびMGPはfraction V,VIで減少し,BSP,OF45,OPNはfraction V,VIで促進した。この結果を昨年までに行ってきた下顎骨組織を用いたin vivoの検討と比較すると,in vivoにおいてもtype I collagenおよびOC発現は骨細胞への分化に伴い抑制され,OF45は骨細胞に優位に発現することが確認されており,すなわち,fraction VおよびVIはin vivoにおける骨細胞の表現形質をある程度再現していることが分かった。したがって,fraction VおよびVIの細胞は,骨細胞分化メカニズムの解明に極めて有用であると思われた。
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