研究概要 |
胎生15日SDラット胎仔顎下腺を各種阻害剤等の存在下で培養し,形態変化,および水チャネルAQP5などの発現をRT-PCRにより解析した.増殖因子前駆体などの活性化に関わるプロセシング酵素SPCに共通の阻害剤であるDec-RVKR-CMK存在下で分枝形成とAQP5発現が抑制されたが,他のトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤では抑制されなかった.この時,SPCファミリーのPACE4の発現も減少したが,同ファミリーのfurinの発現は変動しなかった.PACE4はfurinと異なりヘパリン結合配列を有し,細胞外マトリクス(ECM)に局在する.培養細胞では培地にヘパリンを加えると,ECMに局在したPACE4が培地中に回収されることから,分枝形成へのヘパリンの影響を解析した.その結果,分枝形成とAQP5発現は共に抑制された.また,PACE4触媒領域に対する特異抗体でも分枝形成とAQP5発現は共に抑制され,Dec-RVKR-CMKによる分枝形成とAQP5発現の抑制は,リコンビナントBMP2を加えることで回復した.このBMP2シグナルの必要性は,抗BMP2抗体で分枝形成とAQP5発現が共に抑制されることでも確認された.PACE4に対するRNAi実験により,RT-PCRのレベルでPACE4発現を50%程度まで抑制すると,形態変化の抑制は顕著でないがAQP5発現は50%程度にまで抑制された.更にPACE4発現を90%程度にまで抑制すると,AQP5発現はほぼ完全に抑制され,形態変化の抑制も顕著に認められた.一方,furin,およびPACE4と同じくECM結合型メンバーであるPC6に対するRNAi実験では現在のところ上記抑制効果は認められていない.以上より,顎下腺の分枝形成および細胞分化はPACE4により活性化されるBMP2を初めとする増殖因子などのシグナル伝達の結果促進され,水チャネルAQP5の発現が誘導されることが示唆された.
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