研究概要 |
研究代表者は,これまでに口蓋扁桃に抗原を滴下するだけの簡便な手技で,口腔内の感染予防因子である分泌型IgA(SIgA)を効率良く誘導できる扁桃免疫法をウサギによるモデルで開発した.一方,H.pylori感染の予防には,特異的唾液SIgAの誘導が不可欠だと考えられている.このため,第1にウサギに扁桃免疫法によるH.pylori特異的唾液SIgAの誘導効率が従来の方法より著しく高いことを示すこと,第2にウサギへH.pylori生菌を経口的に播種し,各種の条件下にH.pyloriのウサギの口腔および胃粘膜での定着状況を確認して実験モデルを確立すること,第3に扁桃免疫法で誘導した唾液SIgAによって胃粘膜へのH.pylori感染を予防できるか明らかにすることを研究目的とした. そこで,平成16年度の内定通知を受けた後,直ちに特異抗体の精密測定に不可欠な検出条件の確立に取り組んだ.すなわち,日本人に感染している菌のほとんどを占めるcagPAI陽性H.pylori株を抗原としてウサギに誘導された唾液SIgAおよび血清IgGのELISAによる定量,および菌体の排除に最も強く関係する凝集活性の直接凝集法による検出について,H.pylori全菌体およびCagA蛋白などの各種菌体成分を用いた精密測定素を確立した.次に,H.pyloriのヒト口腔上皮細胞への定着抑制効果をin vitroに確認するための実験条件の設定に取り組み,一定の成果を得た. しかし平成16年8月1日付で厚生労働省へ行政職として異動することとなったため,研究の継続ができなくなった.このため,研究廃止を文部科学大臣に申請した.
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