研究概要 |
Down症および健常者からインフォームドコンセントを十分に行ったうえで、辺縁歯肉を採取し、それぞれから歯肉線維芽細胞を得た。さらに、歯周病原細菌であるActinobacillus actinomycetemcomitans (A.a.)から、歯周病の誘発因子であるLipopolysaccharide (LPS)を採取した.得られたDown症および健常者の歯肉線維芽細胞に対してLPSで刺激を加えた。Down症と健常者の炎症症状における差を検討するため、培養上清を用いて、炎症性サイトカインの産生量をELISA法にて測定し、さらに細胞からRNAを採取し遺伝子解析を行った。ELISA法の結果では培養上清中のサイトカインはDown症のほうが健常者よりも高いレベルで検出された。遺伝子解析はGene chipにて行った。結果、Interferon、Interleukin、Chemokine、Matrix metallopeptidaseなど炎症に関する物質や、老化に関係するsuperoxid dismutaseがDown症において非常に高く検出された。Insulin growth factor binding proteinなどは健常者の方が高く検出された。 また、Down症に認められる早老に注目をおき,老化がテロメアDNAの短縮によるものと考えられていることから,Down症患者から得られた歯肉線維芽細胞にレトロウィルスを用いてhTERT遺伝子の導入を行いLPSで刺激し,炎症性サイトカインであるInterleukin-6(IL-6)産生量をELISAにて測定した.さらにRNAを採取し,遺伝子レベルでの発現を検討した.その結果,hTERT遺伝子導入をした細胞において,IL-6の産生量が減少し,遺伝子レベルでもLPS刺激による産生が抑えられたという結果が得られた.
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