研究概要 |
昨年度までの研究成果により、IL-6の刺激による破骨細胞の分化はgp130-STAT3の経路が担っており,一方でgp130-SHP2-ERKの経路は破骨細胞の分化を抑制性に制御していることを明らかにした。本年度は,骨芽細胞の分化におけるgp130のシグナルの働きについての解析を行った。その結果,破骨細胞の分化と同様にIL-6刺激により誘導される骨芽細胞の分化はgp130-STAT3の経路により制御されており,gp130-SHP2-ERKの経路は抑制性に制御していることが明らかになった。これまで,gp130シグナルのin vitroの解析を中心に行ってきたが,次にin vivoにおける働きについて解析を行った。Gp130-SHP2-ERKを特異的に遮断したノックインマウスは,骨形成速度の亢進による骨量の増加といった表現形を示した。この結果は,in vitroの解析結果と一致していた。一方,gp130-STAT3ノックインマウスは胎生期致死であり成体における骨動態の解析を行うことができなかった。そこで,これまでの解析結果からgp130のシグナルは骨芽細胞において重要な働きを持っていることを突き止めていたので,骨芽細胞特異的にSTAT3を欠損させるCre-loxPシステムを採用し成体におけるSTAT3のシグナルの持つ働きを解析することに成功した。STAT3を骨芽細胞特異的に欠損させたマウスは,骨形成速度の低下による骨量の減少という解析結果が得られた。これは,やはりin vitroの解析結果に一致するものであった。以上の解析結果により,骨芽細胞においてgp130-STAT3の経路は,骨芽細胞の分化を誘導しgp130-SHP2-ERKの経路は抑制性に制御していることがあきらかとなった。In vivoでの破骨細胞の分化におけるこれらのシグナルの働きは依然不明であり,将来的にはより詳細な解析を行い明らかにしたいと考えている。
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