研究概要 |
今年度は、被験者を15人に、食品の物性が経時に変化しているときの脳の賦活領域を詳細に検討した。右利きの健常成人を対象とし、被験者には神経学的な異常および下顎運動時の顎関節部の疼痛・関節雑音・開口障害が認められず、かつスピンエコー法にて撮影されたMRIにて脳内に明らかな病変がないことを確認した後、実験を行った。運動課題(ガムチューイング)は、28秒の休止期間、および28秒の運動期間を交互に4回繰り返すブロックデザインによって遂行された。撮影にはGE社製Signa-LX1.5TMRスキャナーを用いGradient echo echo-planar法(GRE-EPI)で行った。データの解析には脳機能画像解析ソフトであるSPM2(Welcome Department of Cognitive Neurology, London, UK)を使用し、各課題によって得られた4回分の時間連続的EPI画像について解析を行った。その結果、ガムチューイング時にはその物性(硬さ)に関係なく感覚野運動野は賦活しているが、被験食品であるチューインガムの物性(硬さ)が変化している時は変化していない時に比べ、前頭前野、下頭頂小葉、上側頭回、運動前野、補足運動野がより賦活していることがわかった。 さらに、fMRIを利用した運動機能と脳機能の関係解明には、脳機能活動領域計測と手指等の筋力の計測を同時かつ経時的たに行うことが必要である。しかし、fMRI装置内は強磁場が発生しているため、電子素子や金属等、電磁気的要素を持つ物の持ち込みは著しく制限される。そこで非磁性体である光ファイバ、発光/受光素子を用いたfMRIでの強磁場の環境下でも動作きせ得る光学式力センサを利用することを試みた。また、実験課題の設計をこれまでのブロックデザインではなく事象関連デザインを用い、個々の課題に関連する脳活動を時系列データの解析から抽出するようにした。
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