研究概要 |
本研究の目的は,FRCクラスプの適切な形態について三次元有限要素法を用いて構造力学的に検討することである.本研究では,まず材料の異方性を考慮した解析方怯を確立し,これを用いてクラスプアームの断面形態の違いがその応力分布に及ぼす影響について検討することにした. エーカースクラスプアームの断面形態として幅2.6mm,厚さ1.3mmを基本形bB(2.6mm,1.3mm)として,幅を変えずに厚さを変えた場合をa(2.6mm,0.65mm)c(2.6mm,1.95mm),厚さを変えずに幅を変えた場合をA(1.3mm,1.3mm)C(3.9mm,1.3mm)とした. 異方性材料定数は過去の報告と当教室での実測値を参考にした.ガラス繊維の走行方向(材料主軸)を定義するために,クラスプアームの走行方向に一致する座標軸をもつ局所円筒座標系を定義し,この座標系のもとで異方性材料定数を適用した. 5種類の断面形態において,いずれも鉤肩部で最大の応力を示したが,その中でc(幅2.6mm厚さ1.95mm)の断面形態をもつクラスプアームの応力が最小であった.また,一定荷重(5N)のもとでの応力値の変化量は,幅よりも厚さを変化させた場合の方が大きかった.このことは,ある目標とする維持力を得る場合において,応力を小さくするには幅よりも厚さを増した方が効果的であることを示していると考えられる. 本研究では,臨床的に必要とされる維持力とそれに見合ったアンダーカット量との関係を定量的に評価するには至らなかった.この点については,反復着脱試験の実験データを利用した解析方法の確立に着手しており,これを用いて摩擦力をも考慮した維持力とアンダーカット量の定量的評価法について検討することにしている.
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