研究概要 |
本研究では,チタン(Ti)に銀(Ag)またはアルミニウム(Al),銅(Cu)を添加し,さらにTiにハイドロキシアパタイト(HAP)粒子を結合させた材料について放電プラズマ焼結(SPS)法を用いて焼結し,作製した合金の機械的性質,摩擦磨耗,切削性を測定・評価した. 試作合金の組成はTi粒子に各種金属粒子をそれぞれ20%Ag,5%Al,5%Cuの重量で混合した.またチタンに30%HAP粒子の結合はジェットミルを用いて付着させた。それぞれの金属粉末をカーボン製ダイに充填した後,SPS装置に設置して真空下で加圧通電し,焼結を行った. 本研究で作製した合金の理論密度はおよそ97%で,ビッカース硬さはTi焼結体が465Hkであり,Ti成形板に比べて20%Agが28%高く,5%Alが16%低くなった.また最大曲げ強さはTi成形板よりTi焼結体が8%ほど高く,5%Alが32%,5%cuが18%高くなった.曲げ弾性率は粉末焼結するとすべてにおいて高くなり,Ti焼結体が44%,20%Agが80%,5%Alが104%,5%Cuが64%高くなった.回転式摩擦磨耗試験による摩擦摩耗係数はTi成形板がTi焼結体に比べ高い値を示したが,Agの添加によって上昇することが分かった.また歯科用切削器具を用いた定荷重式切削試験の結果,Ti焼結体はTi成形板より切削率が良く,Agの添加でさらに向上することが明らかとなった.チタン-HAP複合体は燒結によって準均一に分散した組成の塊状物が得られた.チタン-HAPによる無機質-金属複合体の機械的性質は,チタンより曲げ強さが10%ほど低下したが切削率は35%と大きく向上した. 以上の結果から,SPS法を用いてチタンを合金化またはHAPと複合化することにより,切削,研磨性の向上・制御などが可能になり,金属アレルギーの観点からも新規の歯科用チタン材として大いに期待できる.
|