研究概要 |
口腔乾燥を訴える患者が増加し,これらは唾液腺の器質的障害を持つ疾患に限らず,器質的障害がみられずとも唾液分泌量の低下がある症例がしばしばみられる.また,唾液分泌量の減少はみとめられないが,口呼吸等により口腔内に乾燥所見を呈す場合も多い.唾液腺に器質的障害を持たない口腔乾燥においては可逆的な唾液分泌の増加が期待でき,薬剤副作用やストレスなどが原因の場合は,その原因の除去とともに,口腔周囲筋の賦活化により唾液分泌促進が期待される. 口腔周囲筋の廃用性の機能低下に対し,臨床において筋機能療法を応用することにより改善がみられることが知られている.本研究ではその効果判定と他の背景的因子との相互関係を探求することを目的として,筋機能療法をおこなう前後における有効な判定指標の確立を模索した. 測定器機の精度検証,測定項目および被検項目と再現性の検証, 舌に対する筋機能療法の効果の定量化を目的とし,カンチレバーセンサーの試作を試み,研究者およびボランティアを被験者としてその特性を検証した.舌の突出時のセンサー値計測のトリガーには舌骨周囲の表面筋電図が有効で,繰り返し貼付や術者の違いにより生ずる電極の貼付位置の誤差は実用的な範囲で問題とならなかった.一方でセンサー固定の地具およびカンチレバーセンサーに用いる材料の物性および構造上の問題で,評価データの再現性に問題がみられ,実用化には剛性面で改良の余地があると考えられた. また,口腔乾燥の最大の原因と考えられる口唇閉鎖と開口の評価を目的として圧力センサーによる口唇閉鎖圧の検討を行った.最大口唇閉鎖圧の測定は,センサー取り付け位置の変位が大きく,再現性に乏しいことから本研究の範囲では妥当性に乏しい結果を得たが,安静空隙量を想定した厚みのバイトフォーク型地具を用いて安静時の口唇閉鎖圧を計測する方法により改善の見通しが得られた.
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