研究概要 |
骨欠損部の形態と機能を回復することは歯科領域においても大変重要であり,骨補填材による形態の回復や,間葉系幹細胞を用いた組織工学的手法による骨の再生など,これまで様々な試みがなされている. 本研究課題では前年度に引き続き,骨形成因子であるBone Morphogenetic Protein (BMP)とe-PTFE(expanded-polytetrafluoroethylene)膜をscaffoldとして用い,in vitroにおいて未成熟筋組織から骨組織誘導を試みた.その結果,H-E染色による組織観察において,無数の骨芽細胞様細胞とこれらの細胞が形成したと思われる類骨,即ち,骨様組織が誘導されていた.さらに,I型コラーゲン,オステオポンチンおよび,オステオカルシンの免疫染色を行ったところ,いずれも類骨部が染色されていた.さらに,間葉系幹細胞が骨芽細胞に分化するのに必須の転写因子であるRunx2/Cbfa-1と,骨芽細胞の分化を決定する転写因子であるOsterixの遺伝子発現をRT-PCRで観察したところ,特に培養1および2日目で強く発現していた.また同様に,培養3,7,10および14日目におけるI型コラーゲン,オステオポンチンおよびオステオカルシンの遺伝子発現を確認したところ,オステオカルシンの発現量は少なかったものの,I型コラーゲンとオステオポンチンの発現量は培養期間中増加していた. さらに,in vitroで誘導された骨様組織を3週齢のSprague-Dawley rat(雄)の背部皮下に移植したところ,移植1週目では無数の毛細血管の侵入が観察され,移植2週以降では骨化が確認できた.特に移植3週後では骨細胞と骨基質が明確に確認することができた.このことは骨化には血液中に存在する何らかの因子が必要であることを示す. in vitroでは骨様組織が誘導されるに留まったが,安定して骨様組織を誘導することが可能となった.さらに,この誘導骨様組織を移植後は骨化することが確認できたことから,今後骨組織再生へ寄与するものと考える.
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