研究概要 |
1.顎関節炎モデルへの抗ウサギTNF-αモノクローナル抗体の直接投与の効果まとめ これまでの結果では抗ウサギTNF-αモノクローナル抗体の直接投与では,慢性期においての治療効果が弱く効果が持続しないことが分かった. 2.遺伝子導入方法の再確認 正常ウサギ顎関節に抗TNF-α抗体プラスミドベクターをエレクトロポレーション法にて導入した.初めは導入効率に個体差が認められたが,導入電圧およびパルスを変化させることでその問題は解決できた.しかし,電圧の上昇とともにエレクトロポレーション法による電気ショックにて神経症状が一部の動物に生じた可能性がある.膝関節における同様の実験では顎関節ほどの導入効率の差や動物に神経症状が生じなかったことから,解剖学的理由による顎関節特有の問題があると考えられた.最近では遺伝子導入に対してより非侵襲的な超音波遺伝子導入などの技術も開発されているが,導入効率の面で問題があった.われわれは,導入効率を上げる方法として標的細胞が特異的に持つ表面抗原に対するレセプターを超音波造影剤であるマイクロバブルに混入する方法を検討している. 3.慢性顎関節炎モデルへの抗TNF-α抗体発現遺伝子導入の効果検討 抗TNF-α抗体プラスミドベクターを関節炎誘発前・関節炎急性期・関節炎慢性期を予定しており,それぞれの時期での関節炎の予防および軽症化を評価した.この実験において,一定の抗炎症性サイトカイン(抗TNF-α)抗体の導入効果を示し,ウサギ慢性顎関節炎モデルに対する抗炎症作用があることを明らかにした.抗TNF-αモノクローナル抗体そのものを直接投与する方法と比べ,効果が持続的である点で優れていた.しかし,それほど大きくない電力とはいえ,比較的高い電圧を局所に与えるため,その侵襲も大きく,特に脳に近い部位に存在する顎関節にこの方法を応用するのは,臨床的に解決しがたい部分が多いことも明らかになった.
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