研究概要 |
平成16年度の研究に続き、ヒト正常唾液腺組織と唾液腺癌組織およびヒト唾液腺導管上皮由来培養細胞(以下HSG細胞)を使用し唾液腺癌の抗癌剤多剤耐性機構について検討した。 正常唾液腺組織において,MDR1とMRP1は,線条部と排泄部導管上皮細胞に検出された.GSTも同様な染色態度を示し,GST-piは,GST-alphaとGST-muに比べ弱い染色性を示した.一方,腺様嚢胞癌組織でのMDR1とMRP1は,主に管腔構造をとる腫瘍細胞で高発現するとともに,GST-piが均一に強染した.また,両transporterおよびGSTサブクラスの陽性率,平均陽性細胞率,染色強度を検討した結果,口腔扁平上皮癌では低値を示し,腺様嚢胞癌と腺癌は,ともに均一な両transporterの発現と強い染色強度を示した.特に唾液腺癌におけるGST-piの発現はGST-muに比べ約10倍の染色強度を示した.培養癌細胞におけるMDR1,MRP1およびGSTの発現をWestern blot法で検討した結果,MDR1,MRP1は口腔扁平上皮癌細胞に比べ唾液腺癌細胞で高い発現レベルを示し,VCR処理による発現の亢進がみられた.また,口腔扁平上皮癌細胞と唾液腺癌細胞においてVCR処理によるGST-piの発現誘導がみられた.HSG細胞において,VCR処理後のMDR1,MRP1,GST-pi mRNAの発現は,VCR未処理に比べ有意に高く,MRP1の発現とともにGST-piのmRNAは高値を示した.VCR処理したHSG細胞を用いた阻害実験の結果,GST阻害剤,GSH合成阻害剤により,VCR感受性が上昇し,さらにMDR1とMRP1のRNAiについても同様の結果を示した.フローサイトメトリーによる検討では,MDR1とMRP1のRNAiによる薬剤排泄機能の低下が認められた.
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